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緊急時の遺言について

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これまで紹介した方式以外に、危急時遺言(民法976条)という遺言の方法もあります。

これは、遺言を遺したい方が①「死亡の危急に迫った」状況、すなわち生死の間際にいる場合の遺言方法です。

自分の手で作成する自筆証書遺言と異なり、第三者の手で作成されますが、緊急時であることから、公正証書遺言のように、公証人が作成することは要求されない遺言方法となります。

第三者とはいっても、遺言をする方の今際の際に立ち会えるぐらいですから、遺言者との間で何らかの関係があることがほとんです。そこで、遺された遺言の内容に作成者の意図が混入せず、遺言者の意思どおりであることを担保するため、②証人3人以上の立ち合いが求められます。

証人になれる方には制限があり、基本的に遺言内容に利害関係がある方は証人となれません(民法982条,974条)

遺言者は③証人に対して、遺言内容を伝え(法律上は「口授」と言います。遺言者が口を聞けない場合は通訳が聞き取って代わりに述べます。)、④証人の一人が遺言内容を筆記して記録します。

⑤記録した証人は、筆記内容を遺言者と他の2人の証人に読み聞かせ,閲覧させます。

⑥内容を確認した他の証人は、遺言書に署名,押印を行います。

⑦遺言の日から20日以内に家庭裁判所へ危急時遺言がなされたことの確認の請求を行う必要があります。

以上のような方式で、お亡くなりになる直前に遺言を遺す、ということが可能となっています。

生命が尽きる間際に遺言ができるほどの意識状態を保っている状況、というのがなかなか稀少であることから、この方式を利用できる機会は多くないとは思いますが、頭の片隅において頂ければ幸いです。